美しい「水」と「日本の音」を聴くCD。
尺八・田辺洌山が初のリーダーとして制作した、澄み渡る尺八の音色とダイナミックな自然の息吹を感じさせる珠玉のアルバムです。
田辺洌山の尺八は、「密度の濃いピアニッシモの音を目指す」という彼の言葉が示すように、一音に込める精神世界に重きが置かれる。彼は93年4月から月1回、演奏の場を秩父札所34ヶ所の軒先に設け、『風姿有韻』と題する会を3年かけてやり遂げた。そこで彼は自然との一体感を得ると同時に、「飾りを払った素朴な演奏」の尊さを知る。
「水の音原風景」は、こうした一連の流れの中にある。「水（は）従（う）方円（の）器（に）」という諺の通り、変幻自在な演奏を楽しみたい。
田辺洌山氏の持つ音はすべての人を魅了せずにはいられない不思議な力がある。香るように漂うその音の中に感じられるのは“艶”であり、それが、ときには空間を鋭く切り裂き、又あるときは柔らかく包み込む。的確なテクニックに裏打ちされたその演奏は、彼の持つスケールの大きさと、その音世界の持つ美しさがあいまって、作品全体の世界をも大きく広げてくれるものであった。
「WAVESⅠ・Ⅱ」は背景としてオーケストラが用いられた作品であるが、この中で洌山氏の演奏には情感とともに、強い生命力が感じられ、「月下流水」では桜井智永氏の豊かで清らかな響きが“あわれ”とでもいうようなものを想起させてくれるもとになっている。
